Jul.2015 Singapore即席麺探索記

先日シンガポールへひとっ飛びして、即席麺44種(袋麺14種、カップ麺28個)を買い込んできた。探索活動はまる二日。

うんと小さな国だけれども、ざっと見て半分以上は自国で生産した即席麺が占めており、その一方で輸入品は国籍・品種ともにバラエティに富んでいて、とても面白い即席麺状況だった。

▼全部じゃないが収穫品。五個パックでしか買えない袋麺が恨めしい。英語よりも漢字での表記が主。

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街中で良く見かけるシンガポール自国生産即席麺のブランドは

  1. KOKA (Tat Hui Foods社)
  2. Nissin (Nissin Foods (Asia)社)
  3. Myojo (Nissin Foods (Asia)社)

が三羽ガラスといったところ。2009年にNissinとMyojoが一つの会社になったため企業として見ればツートップといえよう。スーパーを回った印象だけだとKOKAがやや優勢といった感じだが、コンビニへ行くとNissin/Myojo連合軍の方を頻繁に見かけた。全体としてはこの三ブランドが拮抗しており、三つ合わせて輸入品を含めた市場全体の6割ぐらいは占めているように思えた。

気になった会社としてYeo Hiap Seng社がある。この会社の母体はマレーシアで、Cintanブランドの即席麺をシンガポールへ輸出している。その一方でシンガポールのYeo Hiap Seng社でもYeo’sブランドの即席麺を扱っている(実際の製造はマレーシアなのかもしれない)。しかし今回の調査活動ではYeo’sブランドの製品には一度もお目にかかれなかった。Yeo’sブランドは日本でも一部スーパーとかアジア食材店で見かけるのでシンガポール国内でも結構メジャーな存在なのかと思っていたが、即席麺に関しては輸出専用のブランドなのかもしれない?(なおシンガポール国内においてYeo’sブランドは飲料や調味料などでは超メジャーな存在)

上記以外のシンガポール製即席麺は極端に少ない、というか殆ど無い。高級志向少量生産のPrima Tasteとあともう一社ぐらいか。まあ狭い国だからしょうがない。で、代わりにマレーシア製の即席麺が大量に輸入されており、これらは価格的にもシンガポール産と大差ないレベル。ブランドとしては上述のCintanのほか、MaggiMameeといったところ。A1、Adabi、Vit’sなどといったマレーシアではマイナーだった製品も結構入っている。マレーシアのカップ麺専門で Superブランド(Super Food Technology社、コーヒーミックスが本業) もちょくちょく見掛けた。ここは現在丁度ロゴマーク変更を含めたCIの再構築中のようで、新旧デザインの製品が入り乱れていた。

その他の輸入品として多いのはタイ、中国、韓国、インドネシア製品。その他にも香港やフィリピン、ベトナム産があり、国籍はとても多彩。後述するがシンガポールの文化全般はマレーシアと比べて華僑・中国系の勢力が強い印象。即席麺でも康師傅、統一、今麦郎など中国大陸企業のものを良く見かけたし、今まで現物を見たことが無かった白象の製品も今回入手できた。一方、韓国の製品は他の東南アジアでの存在感と比べやや控えめな印象。農心は韓国ではなく中国で生産された上海農心製である。日本製品は高いので一般的市場には殆ど無いが、日本人御用達のスーパーに行けば主要メーカの定番製品を購入可能。

 ▼スーパーにて。出前一丁もシンガポール製。

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シンガポールの即席麺を購入するに当たり、スーパーだと大抵どこの国にもあるCarrefourをはじめ、シンガポール土着のFair PriceShengSiong、マレーシアにもあるCold Storageなどいろいろある。一方コンビニだとSeven-Elevenほぼ一択といった感じ。上記の中ではShengSiong以外はプライベートブランドの即席麺を持っている。Fair PriceのPB品はシンガポール生産。Seven-Elevenのはタイ製。

スーパーの中で即席麺コーナーが占める割合は日本よりも多めだが、フィリピンやインドネシアのような広大な面積を占有している、という程ではない。袋麺とカップ麺の占める割合はほぼ同じぐらい。コンビニは日本のものより小さい店舗が多いが、カップ麺コーナーは棚一台以下、袋麺は無し。全体的にカップ麺の割合が大きいのは所得水準が高いからなのかな。

海外調達記を書く際にしばし嘆くことだが、シンガポールも袋麺の販売は五個パックが基本。まあ隣国のマレーシアがそうだったからこれは予想の範囲内。だから今回もカップ麺の収集に軸足を置くよう考えていた。ただ想定外だったのは、マレーシア(や台湾などスーパーでの袋麺単品購入が難しい国)でもコンビニへ行けばいくつかの定番商品を単品で買うことが出来たのに、シンガポールはコンビニで袋麺を全く売っていなかったこと。自分が見てきた範囲では、袋麺の単品購入が世界一難しい国だと思う。

シンガポールで製造される即席麺は基本的にみなHALAL認証を受けているみたいだが、輸入品に関しては非HALAL製品も多い。街を歩いた印象ではモスリムよりも非モスリムの人の方が遥かに多そうで、Pork味の潜在需要は結構ありそうだ。これを受け止める役割を輸入品が担っているのかも?

味の種類は無難なChicken、Beef、Vegetable、Shrimp、Curry、Seafoodあたりが定番。マレー半島名物のLaksa味も一般的(但しLaksaは参照する地域によって味が全然違う)。今までの経験からして、シンガポール生産品にはタイや韓国のような超激辛製品は無いと思う。

食生活にこだわりを持つ人や健康志向の人が多いのか、即席麺にも健康を意識した製品が結構ある。例えばKOKAはノンフライシリーズが充実しているし、やはりKOKAでは紫小麦を使ったシリーズがあり、アントシアニンが含まれていますよとアピールしている。No MSG(グルタミン酸ナトリウム)を謳う製品も多い。

ビーフンやフォーなど米粉の麺は全体の一割弱といった感じであまり支持されているという感じではない。緑豆などの春雨はもっと少ない。一方で汁なし麺は割とメジャーで、インドネシア流にミーゴレンを名乗る製品を良く見かけたし、味のバリエーションも多彩。

 ▼シンガポールのコンビニにて

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入国したのは7月上旬で、この時の為替レートは1SGD=92JPY程度。国産製品の価格相場は五個パックの袋麺が1.5~3SGD、まれに高級志向の製品(Prima Tasteなど)で四個パックが8SGD近いものもある。カップ麺は一個1~2SGD程度。え?これって日本の相場とほとんど一緒じゃん。円安ということもあるけど、街中の飲食店を含めてシンガポールは食事のコストが日本と同等以上に高い。

 

<以下雑感>

シンガポールはほぼ赤道直下にあって、直行の飛行機で7時間ぐらい。いやー遠いね。膝とか腰がミシミシと痛くなる(歳のせいでもあるが)。去年行ったインドネシアも同じぐらい遠いけど、エア代をケチって乗り継ぎ便にしたら、途中で休みが入るのでトータルでの時間はかかるものの体にはむしろ楽だった。

赤道直下なので一年中暑い国だが、日照時間は日本の夏より短いのでそれほど過ごし難いとは感じなかった。暗くなってからは冷房が無くても良いと思ったぐらい。即席麺探索を行う際には収穫物を下すため結構頻繁に宿に戻るのだが、一番暑い昼過ぎに戻ってシャワーを浴びてシャツを替えればその後も結構快適に過ごせる。夕方に派手なスコールが降るのもこの地域のお約束。

▼即席じゃない麺の調査(海老+排骨麺)

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私が即席麺探索で海外へ行く時は目的がハッキリしているので観光は無しで街中をただひたすら歩き回るのみ。おもてなしは最低限でいいので安宿しか使わない。だがシンガポールは狭い面積に大勢の人が集まっているので居住コストが高く、宿代も他国と比べてだいぶ値が張る。で、今回安い宿を探して選んだのがカラン川の東、ゲイラン地区にあるホテル。この地域、ガイドブックには詳細が載っていない雑多な下町というか、近代的な開発から取り残された綺麗じゃないシンガポール。

もっとハッキリ言えばRed Light District、赤線地帯のド真ん中。確かに夜歩くと部屋内がピンク色に照らされている建物がズラリと並んでいる。しかし管理都市シンガポールの中での合法営業だけあって、普通に歩く分には絶対に中が見えないようになっており、これなら子供連れで通りを歩ける程度。ポン引きもおらず治安上の不安は全く感じないでちょっと拍子抜け。これなら夜の歌舞伎町を歩く方がよっほど緊張感が高いよ。この辺は食べ物屋も雑多で都心よりは安く、綺麗じゃないシンガポールとはいっても安全で面白かった。

▼ゲイラン名物、蛙のお粥

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せっかくマレー半島にいるのだし今が旬のようなのでドリアンに挑戦。宿のそばの通りに屋台が林立している。奮発して一個15SGDで猫山王という種類の高級品を買う。やー、こりゃ日本で食べるドリアンとは全然違うよ。クリーミーで芳醇、複雑な香り。チーズのようでもあり、洋酒のようでもある。果物の王様と言う称号は伊達じゃない。次の日にもこの半額以下のドリアンを食べたがこれでも十分満足。

▼果物の王様

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シンガポールはマレーシアと近いから街の雰囲気も良く似ているものと思っていたが、必ずしもそうでもなかった。マレーシアよりも中華系の人の比率がだいぶ多いようで、街を歩いてみても漢字の表記がよく眼に飛び込む。何度か乗ったタクシーでも運転手はみな中国語のラジオを聞いていたし。その反面モスリムやインド系の人の姿はあまり見掛けない。このあたりが即席麺の需要にも微妙に反映されているだろう。

中心部は清潔で安全、とっても近代的でお洒落。でも自分にゃホテルのあったゲイラン地区の雑多な雰囲気の方が肌に合ってるな。

▼俺にゃあまり似合わない、綺麗なシンガポール

 「世界三大がっかり」

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ということで、暫くはシンガポール製品の紹介が続きます・・・

と書くのがいつもの告知パターンなのだが、今回は44種購入した中でシンガポール製は20種しかない。このためただ単に今後海外製品の比率が一段と高くなります、ということだけになる。

今回の即席麺探索の行く先は当初韓国かシンガポールのどちらかで考えていたけど、丁度MERS騒動が起きたので韓国はパスして次回以降に持ち越し。ここ数年で新製品がバンバン出ているタイやベトナムへももう一度行かなきゃならないし、中南米やアフリカへの即席麺探索もいつかは行きたいなー。韓国へまだ行っていないのは好き嫌いではなくて新大久保等で現地仕様の製品を結構いろいろ入手できるから。ただ現地の売り場の雰囲気はこの眼で実際に見ておかなきゃいかんよなあ。

何れにせよ現時点で未試食の即席麺在庫が120種ぐらいあるから、次回の海外遠征は年末か来年以降になっちゃうっぽい。


 

過去の海外即席麺探索記

Nov.2014 Taiwan (Taipei) 即席麺探索記(二回目)

Sep.2014 Indonesia (Bari) 即席麺探索記

Jul.2013 Philippines (Manila/Makati) 即席麺探索記

Jul.2012 Malaysia (Kuala Lumpur) 即席麺探索記

Apr.2012 Vietnam (Ho Chi Minh City) 即席麺探索記

Oct.2011 China (Tianjin) 即席麺探索記

Jan.2011 Thailand (Bangkok) 即席麺探索記

Jan.2010 Hong Kong 即席麺探索記

Mar.2006 Taiwan (Taipei) 即席麺探索記(一回目)