▲Nestlé Ukraine、Mivina (Мівіна)の袋麺
バルト三国向けチーズ味(2018)
私はウクライナ(Україна)へ行った経験こそ無いものの、明確にウクライナ製の表示がある即席麺を今まで12個食べてきた。この経験を基に同国の即席麺事情について書いてみる。
ウクライナの即席麺消費量は年間で3.2億食で世界25位(2020年、WINA資料より、2010年は5.4億食だったので減少傾向にある、日本は59.7億食)。人口は4400万人で一人当たり年間7.3食。日本は一人当たり年間47.7食であり、これと比べると少ないが、欧州の国の中ではロシア・ポーランド・チェコと並んで一人当たり消費量の多い国である。
そして消費の他に、欧州全域への即席麺供給基地として存在感が際立つ生産国なのだ(生産量の具体的数値は持っていない)。
▲Mareven Food Ukraine、Rollton (Роллтон)の袋麺
バルト三国向けビーフ味(2019)
同国にはNestlé UkraineとMareven Food Ukraineが即席麺の生産工場を持っている。ネスレは同国内および一部輸出地域でMivina (Мівіна)、場所によってはMaggiブランドを、マルベンはRollton (Роллтон)ブランド製品を作っている。
※検索対策のため文中で即席麺と即席ラーメン、Nestléとネスレなど、同じ名詞を違う表記を混在させて表記しているが、意味を使い分けている訳ではなく同じものとして扱ってほしい。
▲Nestlé Ukraine、Maggiのカップ麺
スペイン向け(2018)
私が食べたNestlé UkraineによるMaggiブランド製品を仕向け地別に分類するとイタリア向け、スペイン向け、バルト三国向け、ギリシャ(とその周辺国)向けの四種がある(もっとたくさんあるだろうと思うが)。
スペインなんてウクライナからはかなり遠いのに、何故わざわざ遠距離輸送をするのだろう?まして非EUのウクライナからEU圏へ輸出を行うには関税も発生するのに?と疑問だった。大規模生産により原材料費や人件費を余程安く抑えて作っているのかな。
また欧州で販売される即席麺には販売者のみで原産国表示が無いものが結構多く、製品の造りからしてもしかしてこれウクライナ製じゃないのかな?ってのも結構あるので、思っている以上に生産量が大きい可能性もある。
欧州の即席麺消費なんてどこも大した量は無く、年間1億食にも満たない国が大多数だ。なので国単位で生産工場を設けたところでチビチビ作ったんじゃ採算ベースに載せるのは難しい。だったらどこかの国でまとめて作ればスケールメリットが出て安くなる、ということでウクライナに工場が集まったものだと推測する。
▲Nestlé Ukraine、Maggiの袋麺
イタリア向けウコンと生姜味、ノンフライ麺(2019)
Nestléの総本山はスイスで全世界的なネットワークがあり、その一旦を担うもの。一方Mareven Food Ukraineは親会社がロシアのMareven Foodで、現在国家間ではあまりに痛ましい関係にあるが、ビジネス的には根深い主従関係の繋がりがある。これは即席ラーメンの話に限らないだろう。
▲Nestlé Ukraine、Mivina (Мівіна)の袋麺
バルト三国向けチキン味(2014)
私はウクライナの現状に対して何もする術を持たないことがもどかしい。それでもこんな駄文を垂れ流すことで、ウクライナ製の即席麺を笑顔でうまそうに食べる人達のことを想像して頂けたら幸いである。